ボーナスを一夜にして全て使い切ってしまったことはさすがの部下も落ち込んだようだ。そりゃそうだ、他の会社の同僚はボーナスを何に使うかで会話が盛り上がっているのだから。部下はもう使えるお金がないから聞いているのが辛いだろう。さすがにボーナスが出て翌日にもうないだなんて誰も思わないだろう。
部下が落ち込んでいるのは他にも理由があるようだ。キャバ嬢のLINE対応が冷たくなった。これまでは未読時間が長くなることはなかったのだが、未読のまま一日経過することが増えた。LINEの返事も一言だけ。話題を振ってもスルーされる。興味を持ってもらえないのだ。なんという分かりやすい態度の変化だ。
20万円という大金を払った結果がこれだ。というよりキャバ嬢は部下がもうお金がないことに気付いているのだ。だから金のないモテないおじさんの優先度は必然的に下がる。キャバ嬢に悪気がある訳ではなく、もちろん駆け引きとかでは全くなく、他の客との序列関係で優先度が下がった結果、力を抜いた対応に自然となってしまっているのだ。
だが結果としてこのキャバ嬢の対応に部下はますます気持ちを奪われていく。未読状態が続けば続くほど不安な気持ちになる。そして返信があると安心してこれまで以上に大きな喜びとなる。もう完全に振り回されている状態だ。自分にできることはこの不安な気持ちを抱えている愚かな部下にキャバクラへ行かせないことだ。
自分「いいか。ついこの前20万円使ったばかりなんだからキャバクラへ行くなよ。」
部下「はい。分かっています。ただ心配で。」
自分「何が心配なんだ?」
部下「何かあったんじゃないかと。最近様子がおかしいんで。」
はあ、やはり状況が全く分かっていない。だからキャバ嬢にとってお前に対する優先順位が下がっただけだって。それは認めたくないよな。気持ちは分かるけどそろそろ現実を見ろよ。キャバ嬢は元気に今まで通り過ごしてるよ。キャバ嬢はお前になんか恋してないって。お金に恋してるの。お前にとっては狭い視野でお目当てのキャバ嬢が全てだと思っているんだろうけど、キャバ嬢は複数の男を相手にしているんだって。もう気付けって。もうこれ以上キャバクラでお金を使うなって。
自分「様子がおかしくても借金がすごいんだし、もうお金を使い過ぎているんだからこれ以上はキャバクラへ行くな。分かったな?」
部下「はい。分かりました。」
自分「身を亡ぼすんだから。お前は人の心配をする前に自分の借金の心配をすべきだ。」
部下「いつも親身になっていただいてありがとうございます。そうですね、これだけ借金があってキャバクラには行けないです。」
自分「借金を返済してお金に余裕ができたら行けばいいさ。それまで我慢だな。」
部下「はい。キャバクラには行きません」
大きなお世話とは思いつつ、借金まみれなんだからキャバクラへ行ける状況じゃない。本人もキャバクラへ行けないと言っているんだからさすがに行かないだろう。しかし部下はそのような思いを見事に裏切ることになる。
つづく
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